Pasteurella pneumotropica (以下肺パスツレラ菌)はげっ歯類におけるパスツレラ症の病原体であるが、その病原性因子は未だ明らかになっていない。本研究はその病原因子の特定と同定手法の開発を目的に実施している。昨年度までの大規模なスクリーニングから、肺パスツレラ菌には、2種類のRTX toxinをコードする遺伝子が存在し、その2種類のRTX toxinともにヒツジ赤血球やマウス赤血球に対して溶血性を示すことが明らかになった。さらに昨年度はその2種類のRTX toxinのマウス由来の単球・マクロファージ細胞株に対する細胞障害性とプロテアーゼ活性の有無について検索した。J774A.1細胞株に可溶化させた組換えPnxIAまたはPnxIIAタンパク質を段階的に添加していくと、J774A.1細胞からの乳酸還元酵素(LDH)の放出量が高まり、細胞障害が起こっていることが観察された。ともに添加4時間後には約70%の細胞障害性があることから、PnxIAおよびPnxIIAはともにロイコトキシンでもあることが示唆された。また、アゾカゼインに対するプロテアーゼ活性を測定したところ、PnxIIAがアゾカゼインに対する高い分解活性を示すことから、PnxIIAはプロテアーゼの作用も有しており、肺パスツレラ菌の重要な病原性因子であるものと考えられた。さらに、肺パスツレラ菌ATCC35149のゲノムを再スクリーニングしたところ、PnxIIAのCa結合サイトと相同性が高い第三のRTX toxin-PnxIIIAが存在することが明らかになった。この遺伝子情報と詳しい機能について現在検討している。
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