本年度実施研究の目的は、磁気共鳴画像法(以下、MRI)を神経生理学領域の動物実験に応用し、その最新画像技術である"拡散MRI"を駆使した非侵襲的神経画像解析法を確立することであった。本研究目的の遂行のため、小型霊長類動物を対象に軽度な視神経変性を作製し、対象神経軸索およびその周囲に生じる微細構造の変化についてMRIによる局所水分子拡散異方性の可視化技術とその定量解析法を応用し、臨床においても実用的なMRI神経画像解析の実現を目指した。さらに、それら拡散MRIの検証手段に利用可能な異なる神経画像解析のアプローチとして、ラット脳を対象とした脳内局所神経賦活の可視化に関する方法論の検討を試みた。 本研究のうち、拡散テンソルMRIにより得られる物理量"拡散異方性インデックス"を霊長類視神経の変性病態解析に応用し、組織病理学的解析と対比から優れた検出能が明示された結果については、本年度10月に開催された日本磁気共鳴医学会大会(横浜)にてその有用性を発表し、後に同学会座長による論文投稿の推薦を受けた。 なお、臨床診断に応用可能なMRIによる神経病態の画像評価スケール構築については、研究代表者が属する施設に設置された臨床用MRI装置において、実験小動物の撮像が実施困難となったため、脳組織マクロ画像上での準備的検討に留まった。これについては、今後も対象となる実験小動物のMRI撮像を他施設等で実施出来るように努め、本研究で得た知見の精度や有用性を高め、当初の目標に向け発展的に検討していきたい。
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