研究概要 |
平成22年度は,食塊の量や物性などの食塊パラメータ,および蠕動運動パターンなどの生理学的パラメータが胃内攪拌現象の力学過程に与える影響を解析した.胃内部の特徴的な流れは,蠕動が幽門に達する際に幽門付近の食物が噴門方向へと押し出される噴流のような流れであり,これにより幽門前庭部から胃体部下方に循環流が生じ,この領域で攪拌が生じる.したがって蠕動運動パターンが同じ場合には循環流の構造は同じとなり,食塊の量が増えるほど胃体部上方に攪拌されにくい領域が増加した.食塊の粘度が100Pas程度以上になると,レイノルズ数が1より十分小さくなり,この噴流の慣性の影響を受けないため,攪拌速度,攪拌される領域ともに著しく減少した.また蠕動運動パターンのうち,胃の狭窄率は噴流の速度を決定する主要因であるため,攪拌効率に大きく影響していることが明らかとなった.さらに,ここまでに開発してきたモデルを固体粒子を含む多相流問題として取り扱うモデルに拡張し,現在の重要課題の一つとなっている固体成分の運動を解析するための計算手法を確立した.同様にこれまでのモデルを拡張し,医用画像ベースの任意の胃形状データを用いて計算するための基礎を構築した.
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