研究概要 |
血漿の連続媒体中を血流条件下において流動する血小板の相互作用を解析する流体力学モデルの構築,および,そのプログラムの作成を行った.また,このモデルに対して平成20年度に構築したフォンウィルブランド因子,および,フィブリノゲンの分子架橋力学モデルを統合した.流体力学モデルには,三次元問題に対するストークス動力学法を応用し,血小板,内皮細胞,および,内皮下組織を球状粒子で表現し,多体の流体力学的相互作用を解析し,血管壁の極近傍の流れを模擬するせん断流中の粒子の運動を追跡することが可能となつた.この流体力学モデルに対し,フォンウィルブランド因子,および,フィブリノゲンの分子架橋力学モデルから導出される粘着力・凝集力をあらたに外力の項として導入し,それらの作用の下における粒子の血流条件下における運動を解析する力学シミュレータを確立することができた.シミュレータにおいては,血管壁性状,血液流動状態,血液構成成分の生理学的条件を柔軟に扱えるよう,血管壁形状,ずり速度,血小板上に存在する血漿タンパク分子密度などを入力パラメータとし,各種の生理学的環境を表現できるものとした.今後は確立した一次血栓形成力学シミュレータを用い,各種の生理学的条件について網羅的なパラメトリックシミュレーションを行う計画である.得られた血栓形成過程より,どのような条件の組み合わせにおいて,止血血栓,病的血栓,および,血栓形成不良が起きるのかを明らかにする.
|