高速なラインカメラを検出器とするタイムドメイン(TD)OCTの開発を目的とした。昨年開発した光学系は、バルク光学素子を用いてフリースペースに構築したもので、利便性が悪く、システム全体が大きなものとなった。そこで本年度はシステムの小型化のため、光ファイバによるライン検出TD-OCTの開発を行い、安価で並列処理が可能なGPU(Graphics Processing Unit)によりOCT画像のリアルタイム表示を検討した。ファイバ出力光源である1.3μm帯SLDから出射した光は、光カップラーで参照側(30%)とサンプル側(70%)に分割される。サンプル側ではガルバノミラーでビームを走査し、サンプルから反射された光は、サーキュレータにより、干渉計へ入射する。干渉計は、透過率の高いペリクルビームスプリッタで構成され、サンプル光は透過のみを使用することでロスを少なくしている。参照側には、回折格子をリトロー配置に設置し、空間的な光路差を発生させる。参照光がレンズによりInGaAsラインカメラ(512画素、47kHz)に結像され、サンプル光と干渉することで、深さ情報が獲得できる。得られた干渉画像からOCT画像を得るには、2次元フーリエ面でのフィルタリングが必要である。測定したデータをGPUへ転送し、2D-FFT、フィルタリング、2D-IFFTの計算を行い、その結果をGPUからホストコンピュータへ転送する。開発にはNvidia社から提供されているGPU向けのC言語の統合開発環境CUDAを利用した。計算時間はフレーム間隔に比べ、十分短く、OCT画像をリアルタイムに表示できた。またこのGPUによる演算技術は、他のOCT技術(フーリエドメインOCT)でも十分利用できることも確認した。
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