本研究は、生細胞内への抗体導入による細胞内タンパク質の可視化を目的とする。ここでは、細胞膜透過能を有するペプチド配列(PTD)と抗体結合タンパク質との融合タンパク質を用いて、抗原の異なる部位を認識する2種類の抗体を導入し、細胞内抗原に結合した際のシグナル検出を計画した。平成21年度は、前年度に構築した分割luciferaseと抗体結合タンパク質との融合タンパク質を用いて、ホモジニアス系において抗原分子認識に伴うシグナルが得られかを検討した。作製した融合タンパク質と抗体を混合し複合体を形成させた後、抗原分子存在下においてluciferase発光測定を行なったところ抗原分子の濃度に依存した発光が観測された。この結果は、抗体・融合タンパク質の複合体が、抗原分子に結合することによりluciferaseが再会合し、活性を回復したことを示す。また、これと並行して細胞内へと導入された抗体が目的分子を認識可能であるかを検討した。ここでは、細胞増殖に関与するSTAT3を標的とし、抗STAT3抗体を、STAT3を恒常的に発現する細胞に導入した。その結果、抗STAT3抗体を導入した細胞は、細胞増殖が抑制され、導入された抗体の結合によりSTAT3シグナルが阻害されたことが示唆された。この結果より、導入された抗体が分子認識能を保持しているが示唆され、前述したluciferaseシステムとの組み合わせにより細胞内分子イメージングが可能であることが示された。
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