研究概要 |
皮質骨の微細孔構造様式及び基質特性の変化が大腿骨頚部骨折を引起す要因の1つとして考えられることから, 本研究では皮質骨の基質特性(骨石灰化度)及び微細孔構造を三次元定量評価することによって, それらパラメータが力学特性に及ぼす影響について解明することを目的とした. 平成20年度では, 研究目的を達成するため皮質骨の微細孔構造及び石灰化度の可視化技術及び評価パラメータの構築に取り組んだ. ウシ大腿骨骨幹部の皮質骨より長さ4mmの円筒状試料を切り出した. 試料に対して画像サイズ1024×1024, 分解能10μmに設定しマイクロCT撮影を行った. 骨石灰化度の評価には, K_2HPO_4ファントムを用いた. 骨の無機成分であるハイドロキシアパタイトとX線吸収係数の等しいK_2HPO_4の水溶液からなるファントムを試料と共にCT撮影し, 得られた画像の輝度値と水溶液濃度の関係から試料の石灰化度を算出した. 本手法で得られる骨石灰化度の測定精度は5%以下であり, 皮質骨および海綿骨の基質の不均質性について評価可能であることを確認した. 皮質骨の石灰化度を評価するパラメータとして平均石灰化度, バラツキ等を定義した. 円筒状試料のスライス画像を3次元再構成しノイズ除去した後, 判別分析法より求めた閾値で2値化した. 骨領域, 微細孔領域を抽出し構造を3次元的に可視化した. 構造指標として体積分率, 微細孔直径, 構造異方性を定義した. 本研究では, 皮質骨および海綿骨の構造・基質を3次元定量評価する手法を構築した. 今後は本手法を用いて, 性別, 部位, 疾患等による皮質骨の差異および皮質骨の脆弱化について検討する予定である.
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