研究概要 |
皮質骨の微細孔構造様式及び基質特性が大腿骨頚部骨折を引起す要因の1つとして考えられることから,本研究では皮質骨の基質特性(骨石灰化度)及び微細孔構造を三次元定量評価することによって,それらパラメータが力学特性に及ぼす影響について解明することを目的とした.平成21年度では,ヒト大腿骨頚部の皮質骨を対象として,微細孔構造及び石灰化度について定量評価した.大腿骨頚部骨折を原疾患として人工股関節置換術を施された女性患者5名から,摘出された大腿骨頚部から皮質骨を試料として切り出した.患者の平均年齢は83.8歳であった.試料に対して画像サイズ512×512,分解能13.2μmに設定してマイクロCT撮影を行った.得られたスライス画像を三次元再構築し,一辺が1ミリの立方体検査対象領域を設定して各種パラメータを算出した.皮質骨の石灰化度を表現するパラメータとして平均石灰化度,変動係数(不均質性)を計測した.さらに皮質骨内の微細孔構造特性を評価するために空隙率を定義した.撮影試料のスライス画像を3次元再構成しノイズ除去した後,判別分析法より求めた閾値で2値化し,骨領域,微細孔領域を分離構造を3次元的に可視化した.解析結果として,大腿骨頚部皮質骨の平均空隙率は11.4±5.9%であった.また,皮質骨内の石灰化度分布にバラツキはほとんど認められず,変動係数は平均2.7%を示したことから,皮質骨の基質は均質材料として見なせると考えられた.したがって本研究結果から,加齢に伴う微細孔構造すなわち空隙率の増加が骨脆弱化による骨折を引き起こす重要な因子であることが示された.
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