本研究の目的は、形状記憶合金(SMA)を用いた人工股関節(THA)を作製するための基礎研究であった。 1年目(平成20年度)は有限要素解析を用いて、THAにSMAを用いる際、どの部分にSMAを用いるのが有効か検討した。その結果、大腿骨コンポーネント(ステム)に用いることに決定した。そしてその際セメントレスステムの前後面に用いることが有効であることが示された。ここまでの内容が、Journal of Biomechanical Science and Engineeringに掲載された。 2年目(平成21年度)は実験的にSMAを用いたTHAが有効であることを示すべく研究を行った。まず、SMAの熱処理装置を完成させ、実際に熱処理を行うことにより、最適な熱処理条件を決定した。次に、熱処理されたSMAを用いたTHAステムを作製し、模擬大腿骨に模擬的に手術を行い、実際に荷重を負荷した。荷重付加後のインプラントの安定性を評価した結果、SMAを用いたステムは、SMAを用いないステムと比較して骨に対する相対変位が少ないことが確認された。つまり、初期の安定性に優れることが示された。 本研究では、理論的(有限要素解析)かつ実験的(in vitro実験)の両面からSMAを用いたTHAの有効性を示すことができた。さらに、これらの研究を行うための装置を整え、今後さらに研究を発展させていく基盤を作製できた。
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