細胞分裂は、細胞極性の確立、細胞表層の変形態の変化、表層の伸び縮みを含む、時間・空間的に調節された力学的現象である。そこで、細胞の力の推定、および、細胞の変形を担うタンパク質であるアクチン、ミオシンの局在のイメージングを行い、これらの結果を関連付けて、力学的、分子的両観点から細胞の変形メカニズムを定量的に検討することを計画した。平成20年度は、力の推定およびタンパクの局在の時空間変化のイメージングを行うための予備的な実験および解析を行った。材料として魚の上皮細胞を選択した。この細胞は、円盤形から三日月形へと形を変える性質があり、このプロセスでは、細胞分裂と同様、細胞極性の確立、細胞表層の変形能の変化、表層の伸び縮みが起こっている。さらに、外部から摂動を加えて、円盤形から三日月形への遷移を引き起こすことができるという特長がある。力の推定に関しては、必要と考えられるパラメータの計測法を確立した。具体的には、円盤形、三日月形、円盤形から三日月形へと遷移する細胞の顕微鏡画像を取得し、これを2値化して、局所的な突出量および退縮量、曲率を計測する方法を確立した。タンパク局在のイメージングに関しては、トランスフェクション試薬を用いた遺伝子導入、エレクトロポレーション法による遺伝子導入、蛍光標識を細胞内へのインジェクションを試みた。その結果、魚の上皮細胞には、蛍光標識の細胞内へのインジェクションが適していることが分かった。平成21年度は、力とタンパク局在の時空間変化の同時測定を行い、分子のふるまいと細胞の機能を結びつけて細胞の変形メカニズムを考察する予定である。
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