研究概要 |
細胞分裂や移動運動をはじめとした細胞機能は,細胞の形が細胞内外の変化に応じてダイナミックに変化することにより達成される.この細胞の適応的な変形を達成するメカニズムを明らかにするために,分子的観点のみならず,力学的観点も取り入れて,細胞における分子のふるまいを細胞の機能を結びつけて理解することが本研究の目的である.本年度は以下の成果を得た.(1)多様なスケールでの細胞外縁の運動性の時空間パターンを解析し,細胞外縁部の突出には,数十秒から数秒,数十μmから数μmの範囲内に,複数のスケールで協調メカニズムが存在するという結果を得た.さらに,数秒,数μmのスケールにおいて,細胞形状と運動性との間に相関が見られることも明らかにした.これら結果からアクチンと細胞膜とのメカノケミカルフィードバックを推定することができた.(2)マイクロ構造化表面を利用して細胞に力学的な摂動を加えた場合の細胞形状と運動性の変化を解析し,細胞に方向転換を促すマイクロ構造,細胞の運動性を著しく低下させるマイクロ構造の,パターン,サイズを明らかにした.この定量的データから,マイクロ構造に対する細胞応答のメカニズムを,仮足のアクチン細胞骨格構造と細胞体の力学的性質を基にして考察することができた.(1)(2)の成果は,細胞形状の適応的な変化とその結果として達成される細胞機能を実現するためのメカノケミカルなシステムの構造分析,および,システム制御に重要な寄与をすると考えられる.
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