大脳皮質の前頭連合野は、高次な認知思考段階での統括的な指令塔として重要な役割を担う。しかし、脳神経活動のダイナミクスは複雑で捉え難いため、前頭連合野内での各部位の働きや相互作用性は不明な点が多い。本研究では、素早く変化する脳の神経活動を捉えるため、高い時間解像度を有した脳磁図や脳波測定を用い、高次な認知思考過程における前頭連合野の働きを検討することを目的とする。ストループ(色名呼称)課題を用いて、反応時間(健常者12名)及びMEG(7名)測定を行い、神経活動の周波数依存性を確認した。また、健常者に比べて高齢者(国立長寿医療センター研究所において検査)では、ワーキングメモリ課題における認知機能特性の低下が認められた。前頭葉でのより高度な認知思考過程を検討するため、心的イメージに関連する課題を用いた評価(被験者14名)も行った。平面図のみを手がかりとし、3次元形状を頭の中で構築するには、他のワーキングメモリ課題より、さらに多くの脳内処理と相互作用性を要することが示唆された(学会発表で公表)。この課題では、前頭葉のみならず、視覚野・頭頂葉(空間処理)・側頭葉(形状認識)などが、互いに協調しながら高度な脳内処理を行っていると考えられる。さらに、前頭連合野での神経活動の因果関係や相互作用性を検討するための手法として、ウェーブレットによる時間周波数解析を用い、リアルイムにシステム特性を明らかにできる解析法を考案した(学術論文で公表)。今後は、これまでの成果をさらに進め、各周波数帯域での脳神経活動のダイナミクスと相互作用性を明らかにしていく。
|