本研究では全身投与型遺伝子治療の実用に耐えうる非ウィルスベクターを開発するべく、ポリマーの徹底的な造り込みによるPEG化ポリイオンコンプレックス(PIC)型高分子ミセルの血中滞留性向上を目的としている。 平成20年度に行ったPEG/ポリカチオンブロック共重合体の中間セグメントに疎水性基を導入した系では、従来の疎水性基を含まないコンプレックスと比較して特段の細胞毒性増加増大をみせることなく培養細胞への遺伝子導入効率を格段させ、in vivo実験では腫瘍増殖抑制効果が確認されたが、後の検討で疎水性リンカーによる効果が極めて限定的であることが判明し、平成21年度前半はその原因の追及と再現実験に時間を費やし、実験系の再構築を検討した。中間セグメントへの疎水性リンカーは、コンプレックス形成後に隣り合うPEG鎖同士が十分に近接することが難しいため、十分な効果は期待できないという結論に至った。そこでコンプレックスを安定化するため、疎水基をポリカチオンの重合末端に導入することとした。導入する疎水性基の候補として低分子および高分子を検討しており、特に疎水性高分子としては、低温では水によく溶け、体温付近で疎水化する性質を持つポリオキサゾリンを候補分子として設定した。平成21年度の後半からはポリマー合成の条件検討を行っている。ポリアミノ酸の重合末端には活性な1級アミノ基があることから、活性エステル法を利用しての導入方法の検討を行っている。
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