本研究の最終的な目的は、アルギン酸カルシウムゲル及びコラーゲン等の生体材料を用いて神経幹細胞から分化誘導したニューロン・アストロサイトや血管内皮細胞をシート化し、重層化することによって、成体脳内の脳血管-神経組織構造のようなニューロン・アストロサイトー血管内皮細胞複合組織シートを作成することであり、平成20年度の中間目標は神経幹細胞をシート状の生体高分子ゲル上でニューロン・アストロサイトへと分化誘導し、適切な密度の細胞組織シート作成することであった。 平成20年度の研究では生体材料であるコラーゲンゲル上でのマウス神経幹細胞からニューロン・アストロサイトへ分化伸展させるのが困難であったため、まず、効率よく分化伸展できるようにコラーゲンゲルを改良する必要があった。コラーゲンゲルに化学的処理を施す事によって、より分化伸展する材料へと改良することに成功した。また、化学処理によるコラーゲンゲルの特性変化に対する細胞の形態変化を画像解析することにより細胞の伸展率を調節できるパラメーターを見出すことができた。更に、細胞シート上の細胞数を調節する技術として、活性酸素を発生させる光増感反応に着目し、細胞の活性酸素に対する感受性の違いを利用して未分化細胞、ニューロン、アストロサイトの細胞数の割合を変化させることに成功した。これらの結果より、コラーゲンゲル上で密度の高いニューロン・アストロサイト共存細胞シートが可能となった。 今まで軟組織であるために加工が難しかった中枢神経系組織をシート状に加工するために重要な基礎技術になると考えられる。
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