本研究の目的は、アルギン酸カルシウムゲル及びコラーゲン等の生体材料を用いて神経幹細胞から分化誘導したニューロン・アストロサイトや血管内皮細胞をシート化し、重層化することによって、成体脳内の脳血管-神経組織構造のようなニューロン・アストロサイト-血管内皮細胞複合組織シートを作成することであった 底面に多孔質の膜を有するセルカルチャーインサート内にアルギン酸カルシウムゲル層を作製し、さらにその上にコラーゲンゲルを作製した。コラーゲンゲルは水溶性カルボジイミドで架橋を施しコラーゲンゲルの強度を高め、それらの基材上にて血管内皮細胞の培養や神経幹細胞/前駆細胞の分化誘導を行った。細胞が展開したコラーゲンゲルをセルカルチャーインサート底面よりクエン酸溶液を浸み込ませることにより剥離させ、コラーゲンゲル層を有した血管内皮細胞シートおよび神経幹細胞/前駆細胞から分化誘導した中枢神経系細胞シートを各々重ね合わせることにより中枢神経系細胞・血管内皮細胞複合組織シートが作成できた。血液脳関門の血管内皮細胞に発現するトランスポーターABCB1やABCG2、タイトジャンクションタンパク質であるZO-1やoccludinの発現をリアルタイムPCR法にて確認した。また、蛍光色素であるRhodaminなどを用いて細胞が持つ排出能の評価や評価実験として細胞障害試験なども行った。 本研究で作製した中枢神経系細胞・血管内皮細胞複合組織シートの機能に関しては未だ詳細につては評価中であるが、薬剤検査などの基材として有用な手段になると考えられる。
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