ナノ粒子薬剤キャリアの作製として、腫瘍部への受動的なターゲティングが期待できる直径約100nmのカーボンナノ粒子を素材として利用し、分散性と血中滞留性の向上が期待できるポリエチレングリコールによる修飾と、細胞による粒子の取り込みを促進する効果がある細胞膜透過性ペプチドの修飾を行い、その効果を検討した。ポリエチレングリコールの修飾は、非共有結合による修飾と、共有結合による修飾の検討を行った。非共有結合による修飾では、カーボンナノ粒子に結合するペプチドとポリエチレングリコールの複合体を合成し、カーボンナノ粒子と混合することで、水溶液中で分散させることができた。さらにマウスの尾静脈に投与し、肺への蓄積がほぼなくなることを明らかにした。一方、共有結合による修飾は、カーボンナノ粒子表面のカルボキシル基とポリエチレングリコール修飾カーボンナノ粒子と反応させた。修飾カーボンナノ粒子の挙動を調べるために、蛍光色素フルオレセインも導入した。作製したカーボンナノ粒子が細胞に取り込まれるかについて、カーボンナノ粒子を細胞培養倍地中に添加し、その後細胞を洗浄してから共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察した。ポリエチレングリコールで修飾したカーボンナノ粒子はほとんど細胞内に取り込まれなかったが、細胞膜透過性ペプチドを導入したものでは、細胞内にカーボンナノ粒子が取り込まれており、細胞膜透過性ペプチドによってカーボンナノ粒子が細胞に取り込まれやすくなったことがわかった。
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