研究課題
腫瘍部に到達後、腫瘍部への集積やがん細胞との親和性が向上するような性状に変化する薬剤キャリアを作製するため、直径約100nmのカーボンナノ粒子に着目し、種々の表面修飾を行った。昨年度は、カーボンナノ粒子に水溶液中での分散性と血中滞留性を賦与することが期待できるポリエチレングリコールと、細胞による取り込みを促進させることが期待できる細胞膜透過性ペプチドを共有結合で化学修飾したカーボンナノ粒子の作製を行った。本年度はカーボンナノ粒子の水中分散性を改善するため、ポリエチレングリコールによるカーボンナノ粒子の化学修飾のさらなる検討を行った。直鎖ポリエチレングリコールを用いた場合、分子量1000程度のポリエチレングリコールのほうが、長鎖ポリエチレングリコールを用いた場合に比べ、分散性のよいカーボンナノ粒子を得られることがわかった。また、共有結合修飾と非共有結合修飾を組み合わせることを試みた。非共有結合修飾を行うためのカーボンナノ粒子との結合部位として、カーボン結合ペプチドあるいは抗がん剤ドキソルビシンを用い、ポリエチレングリコールと複合化した。これらを化学修飾カーボンナノ粒子に添加すると、さらに分散性が向上した。このことから、化学修飾したカーボンナノ粒子に対しても、カーボン結合ペプチドやドキソルビシンをもつ分子が結合できることがわかった。そこで、共有結合と非共有結合による修飾を併用することで、腫瘍部で表面性状を変化させるカーボンナノ粒子の分子設計の見直しを行った。腫瘍部位でカーボンナノ粒子の分散性と細胞との親和性を変化させるため、鎖長の異なるポリエチレングリコールを腫瘍部位で高発現している酵素の基質ペプチドで連結した分子によるカーボンナノ粒子の化学修飾に着手した。また、ドキソルビシンと細胞膜透過性ペプチドの複合化を行った。
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