研究概要 |
本研究の目的は,拡散テンソルMRI (Diffusion Tensor Magnetic Resonance Imaging: DT-MRI)画像に基づいて,脳白質だけではなく皮質などを含めた脳機能情報を解析・可視化する手法を開発することである. これを実現するために昨年度では,脳機能領野同定の前処理として、画像内の脳領域に対する白質・灰白質・脳脊髄液領域の抽出手法の開発と、評価用のファントム作成を行った. 当該年度は、昨年度開発した手法に加えて、新たに部分体積効果を考慮した白質、灰白質、脳脊髄液領域を抽出する手法の開発を行った. 拡散テンソル画像における脳領域抽出手法は,レジストレーションに某づいた手法と各ボクセルを一つの組織クラスに分類する手法(ハードセグメンテーション)が報告されている.レジストレーションに基づいた手法では,すでに領域抽出されたT1強調画像と拡散テンソル画像(たとえばB0画像)とレジストレーションする際のミスレジストレーションによる誤抽出が問題となっている. またハードセグメンテーションでは部分体積効果の影響が問題となり,拡散テンソル画像はボクセルサイズが2ミリ程度なため,部分体積効果が大きく,十分な精度が得られないという問題がある. そこで本研究では,拡散テンソル画像における部分体積効果を考慮した白質,灰白質,脳脊髄液領域を抽出する手法を新たに開発した.レジストレーションを用いず,また部分体積比を推定することで,先行研究の問題点を克服しよりというものである. 当該年度では,昨年度作成した評価用のディジタルファントムを用いて根案手法と従来手法の定量的な評価を行った.また5人の被験者の拡散テンソル画像に適用し、放射線科医による視覚評価を行った. 提案手法による抽出領域とディジタルファントムにおける真の領域との一致度は,脳白質・灰白質・脳脊髄液領域においていずれも0.9以上となった.また被験者データにおける目視評価でも良好な抽出結果が得られた.太研究開発した手法では,拡散テンソル画像から脳白質・灰白質・脳脊髄液領域を良好に抽出できることを示した.
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