本研究ではガイガーモードアバランシェフォトダイオード(GAPD)の中で、浜松ホトニクス社から市販されているマルチピクセルフォトンカウンタ(MPPC)を用いて研究を進めている。本年度はまずシングルチャネルのMPPC(S10362-11シリーズ)を用いて、その陽電子断層撮像(PET)用検出器としての基礎特性の調査を行った。これらは今後のMPPCを用いたPET用検出器開発においての重要なデータとなると考えられる。また、実際にシンチレータとの組み合わせて用いた場合の評価も行った。現在その発光量の大きさと発光減衰時間の短さからPET用検出器でよく用いられるLYSOシンチレータを用いて、511keVガンマ線に対する応答を評価した。我々のグループで用いられている深さ位置情報(DOI)識別法である光分配型DOI方式は、発光量が高いシンチレータを用いた方が結晶の弁別能が良いことが過去の研究からわかっており、シンチレーション光の検出数に限界があるGAPDと高い発光量を持つシンチレータとの組み合わせにおいて十分な性能が得られたことは、MPPCを用いた光分配型検出器を作成した場合にも優れた性能が得られることを示唆している。またMPPCは軽量・薄型の素子であるため様々受光素子配置をとることが可能であると考えられる。前述の性能評価の結果は光分配型検出器以外の可能性も示しており、それらの検討も行った。今後は素子を2次元のアレイ状に並べたMPPCアレイと光分配型DOI方式を適用したシンチレータブロックの組み合わせで検出器の作成を行い、そのPET用検出器としての性能評価や特性を調べてゆく予定である。
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