本研究ではガイガーモードアバランシェフォトダイオード(GAPD)の中でも、浜松ホトニクス社から市販されているマルチピクセルフォトンカウンタ(MPPC)を用いて研究を行った。検出器は4×4のアレイ型MPPCであるS11064シリーズを用いた。リニアリティ・光子の検出効率を決める重要なパラメータであるピクセル数は3600ピクセルの素子を使用した。現在一般的に用いられている、結晶とMPPCの読み出しが1対1に対応している検出器では、少ないピクセル数だと出力信号が飽和してしまうためピクセル数は多いが光子の検出効率の低いタイプの素子を使用する必要がある。本研究で採用している光分配型の読み出し方式の場合、シンチレーション光を分散して読み出すために飽和の効果を受けにくい。そのためピクセル数が少なく光子の検出効率が高い3600ピクセルの素子を使用することが可能となる。 本研究では高空間解能が要求される小動物PETをめざし、1.45mm×1.45mm×4.5mmのLYSO結晶を6×6×4段のアレイ状に組んだ結晶ブロックと4x4のMPPCアレイであるS11064の組み合わせで試作型検出器を作成しPET検出器としての評価を行った。その結果、エネルギー特性としてはPET検出器に要求される511keV消滅放射線に対し11%-13%のエネルギー分解能と、511keVのエネルギー付近で十分なリニアリティーを得ることが出来た。同じMPPC素子を使用した場合、1対1読み出しの場合には511keV付近では明らかにリニアリティが崩れており、光分配方式はMPPCアレイを用いる場合に適していることが示された。また、結晶弁別能に関しては異なる受光素子の位置敏感型光電子増倍管(H9500)、アレイ型アバランシェフォトダイオード(S8550)で作成した検出器と比較を行い、これらと比べて優れた結晶弁別能を達成した。 これらの結果から、本研究で提案をした光分配型MPPC-PET検出器は既存の受光素子や他のシンチレーション光読みだし方式を用いた検出器と比較して優れた性能を得ることが可能であることが示された。
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