我々は平成18年度に、体軸方向に2分割した検出器リングを離して配置し、物理的に開放された視野領域を有する世界初の「オープンPET」を提案し、実現可能性を示したが、開放化に伴う画質低下が生じることも分かった。一方近年、検出器深さ位置(DOI)情報や飛行時間差(TOF)情報を計測可能なPET検出器の研究開発が盛んに行われている。そこで本研究では、データ欠損を補う付加的な情報としてDOI情報やTOF情報に注目し、これらの情報を付加することで画質向上を図るオープンPET画像再構成の開発を目的とした。今年度の研究実績は以下の通りである。 1.DOI情報を付加したオープンPET画像再構成手法の実装 オープンPETの課題のひとつである検出素子の厚みによる体軸方向分解能の劣化に対して、DOI情報を用いることで体軸方向分解能の回復を図る。具体的には、DOI情報を含めた検出器応答をモデル化し、システムマトリクスを構築し、逐次近似型画像再構成手法を実装した。 2.オープンPETの感度特性を改善する新しい検出器配置方法の考案 オープンPETのもうひとつの課題は、開放領域の中央に感度が集中し、開放領域の周辺で感度が極端に低下してしまうことである。これに対し、左右の検出器リングの間隔が変化するように、検出器を体軸方向に移動させながら計測を行うことによって、感度のばらつきを抑制する方法を提案した。 3.オープンPET用DOI検出器の試作と評価 オープンPETのひとつの応用として、重粒子線がん治療におけるビーム照射野のリアルタイムモニタリングを検討している。そこで、オープンPET用のDOI検出器を試作し、重粒子線照射下での動作試験を行った。
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