我々は、体軸方向に2分割した検出器リングを離して配置し、物理的に開放された視野領域を有する開放型PET装置「OpenPET」を提案し、3次元放射線位置(DOI)検出器を用いれば、開放化による体軸方向の分解能低下を抑制できることを示してきた。OpenPETは、検査ストレス低減に留まらず、リアルタイムPET!CTや全身同時視野PETを可能にし、さらにはがん診断と放射線がん治療の新たな融合にまで繋がると期待される。一方、開放視野は、傾斜同時計数線のみから画像再構成されるため、OpenPETの画像再構成問題は、低周波成分が欠損する不完全問題となる。そこで本研究では、欠損情報を補う方法としてtime-of-flight(TOF)情報に着眼し、TOF情報による画質改善効果を計算機シミュレーションにより示した。具体的には、2本の検出器リング(直径827.0mm、幅153.6mm)を153.6mm離して配置した計算機シミュレーションを行った。検出器は、8層のシンチレータ深さ位置(DOI)分解能と400psのTOF分解能を持つと仮定した。TOF情報を含まない従来型OpenPETの場合、スポット状物体であれば良好に画像化できるが、低周波成分を多く含むディスクファントムに対しては、開放空間において歪みが生じてしまう。これに対して、TOF情報を付加して画像再構成を行うと、上記の歪みが大幅に低減された。通常のPET装置では、現在のTOF分解能(数百ps程度)による画像のSIN比改善効果は限定的であるとされるが、OpenPETにおいては、TOF情報による不完全画像再構成問題の改善効果が顕著に見られることから、TOF情報の新たな活用方法として期待できる。
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