平成20年度は、抗体およびT細胞受容体の抗原エピトープ予測システムを構築する最初の段階として、十分な数の対象アミノ酸配列の学習セットを用意し、これをまずは当研究機関の内部で参照できるデータベースにするための作業を行った。具体的には、ヒトおよびマウスにおける免疫関連遺伝子のアノテーション情報を、世界中の主要な免疫学データベースから定期的に自動収集・整理するスクリプトの作成、さらにこれらをMySQLベースで速やかに検索・表示できるような統合データベースにするための種々のスクリプトを作成した。これらの一連のスクリプトをLinuxサーバ上で自動実行することにより、プロトタイプではあるが、免疫関連遺伝子のアミノ酸配列・文献情報および構造データについて、現在世界で最新かつ最大規模となるコレクションを構築することができた。その後、研究計画に記載した外部研究協力者との連携により、この統合データベースをブラウザ上からGUIインターフェースで操作できるように改善し、相同性検索プログラムBLASTや配列アラインメントプログラムCLUSTALWを実装した。さらに立体構造表示プログラムであるJmolをベースに抗体およびT細胞受容体の高次構造を可視化するシステムを搭載した。 上記の作業を行う一方で、高性能計算機ワークステーションを用いて、免疫系分子間の相互作用をタンパク質ドッキングの手法によりシミュレーションするシステムの開発に着手した。平成20年度では、遺伝的アルゴリズムに基づいたフリーのドッキングソフトウェアであるAutoDockを抗原エピトープの座標計算のコアとして組み込み、抗体タンパク質とのドッキング精度の検討を行った。その結果、抗体タンパク質による抗原エピトープの認識反応をコンピュータ上で一部再現することに成功した。
|