聴覚障害児の円滑なコミュニケーション能力の発達を目指して1)発達障害の合併率の検討2)コミュニケーション能力に直結する言語モダリティーの到達度(定形発達児にける基準値の作成)3)聴覚情報処理障害事例を通じた環境調整による聴能への改善について検討を行った。1)本院言語聴覚外来と近隣A市における難聴児親の会を通じてのフィールドワークにて調査を実施した。調査対象は言語習得期前高度感音難聴35名であった(一部精査を継続している)。その内今回調査項目として上げた(1)発達性読み書き障害の疑い児(2)広汎性発達障害の疑い児(3)言語性意味理解障害の疑い児は(1)で2名(2)で4名(3)で3名と合計8名(1名重複)と全体の20パーセントに及ぶことが明らかとなった。これらは現時点で報告されている、発達障害の出現頻度に比して有意に高い数字であるといえる。また広汎性発達障害について頻度が高く出ているが、これは今回用いたPARSの項目自体が難聴児での合併に対して今後改良すべき点を示唆するとともに、コミュニケーション能力の実用度についての現状を反映した結果であるといえる。さらに難聴児のコミュニケーションだけでなく学習まで視野に入れた場合、書記言語の到達度や言語性意味理解の問題によって生じる語彙の問題は学習に重篤な影響を及ぼし、症状を重篤化すると考えられる。これらの出現頻度と背景についても今後検討を加えていく必要がある。3)の環境調整については、今回純粋に語音聴取能の低下を示すAPD児に対してFM補聴デバイスの装用を促し、s/n比改善を図り一定の効果を認めた。個体内要因と環境要因に分け、今後も検討を加えていく。
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