聴覚障害児における円滑なコミュニケーション状況や学習状況を確保するために、コミュニケーションや学習を阻害する因子である、発達障害の傾向の有無を一定地域において調査し、その児に対して低下を示した言語機能に対する集中的な指導のあり方とその効果を検証した。特に構文処理能力が十全に整っておらず、かつ非言語性のコミュニケーションスキルが良好に保たれ代償的にコミュニケーションを補完している児が散見され、これらは学齢があがるに従い、学習やコミュニケーションスキル全般に大きな問題を呈することが明らかとなった。一般的に「9歳の壁」と言われる事象は難聴児特有の言語・学習上の所見ではなく、その多くに学習モダリティーや要素的な言語機能の不十分さを認識せずに学習を積み重ねた結実であるとも考えられる。
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