研究概要 |
1,線分模写課題を用いた左半側空間無視症状の下位分類評価 左半側空間無視症状の評価として,用紙の左側を見落とすタイプと提示された見本の線分の左側を見落とすタイプのそれぞれが評価できると考えられる線分模写課題を考案し,複数の症例に対して評価を実施してきた.昨年度までは,用紙の左側のみを見落とすタイプと用紙の左側と線分の左側の両方を見落とすタイプの存在は確認できていたが,線分の左側のみを見落とすタイプが存在するかどうかは明らかではなかった.そのため,今年度も継続して検討したところ,このタイプの患者も存在することが明らかとなった.このことから,線分模写課題で評価している2つのタイプの症状は二重解離することが確認され,この課題はそれぞれのタイプの半側空間無視を別個に評価しうるものであることが明らかとなった. 2,プリズム順応効果の検討 左半側空間無視患者に対するプリズム順応効果を検討する前に,健常者を対象にその効果を線分二等分課題と線分模写課題を用いて検討した,その結果,線分模写課題でのみ成績に変化が認められ,プリズム順応効果によって模写された線分の長さは長くなることが明らかとなった.この結果は予想と異なるものであったが,症状の軽い左半側空間無視患者でも同様な現象が起こる可能性があり,症例の検査結果を検討する上で参考になる所見が得られた. 3,プリズム順応効果が認められた症例と認められなかった症例の比較 今年度は,研究対象の条件を満たす症例を経験することが難しかったため,結果を分析するだけの十分なデータを収集することができなかった.今後も継続してこの課題について検討を行う必要がある.
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