研究概要 |
1,プリズム順応課題に用いる最も効果的な視標提示方法の検討 3つの異なる視標の提示条件を用いてプリズム順応(PA)課題を行い,どの条件で最も高い効果が得られるかを検討した.次の3つの条件に対して,ランダムに患者を配置した-条件(1):左右に2つの視標を提示.条件(2):条件(1)と同じ場所に提示するものの,1つの視標を左右交互に提示.条件(3):水平な線で左右の視標をつないで提示. 条件(1)に2例が参加し,1例でのみ順応の成立が認められた.条件(2)にも2例が参加し,1例でのみ順応成立が認められた.条件(3)では3例が参加し,全例において順応の成立が認められた. いずれの条件においてもプリズム順応が成立しうることは確認できたが,線でつないだ視標の提示条件が最も効果的であることは症例数が少ないために,断定することは困難であった. 2,異なる左半側空間無視症状に対するプリズム順応効果の検討 用紙の左側に対する半側空間無視と刺激の左側に対する半側空間無視のそれぞれが確認できた課題は,線分模写課題と図形識別課題であり,両タイプの症状に軽減が認められたのは,前者の課題のみであった.複数の線画で構成された模写課題においては,構成障害の影響により順応効果を判定することが困難であった.課題特異的である可能性は否定できないが,いずれのタイプの半側空間無視症状に対してもPA課題は効果的であることが明らかとなった. 3,プリズム順応課題によって症状改善が期待できそうな症状特性と病巣部位の検討. PAの成立が認められた群と認めら得なかった群でPA課題の直前に実施した机上検査の結果を比較したが,両者に明らかな違いは認められなかった.また,病巣部位を検討すると,右中大脳動脈領域の前方損傷でも,後方損傷でも順応効果が認められる場合があり,一定の傾向は確認できなかった.このことより,病巣部位から順応の可否を推定することも困難であると考えられた.
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