研究概要 |
ろう者の言語処理過程を分析するためにミスマッチ反応を引き起こす手話例文収集を行い手話動画映像による実験方法を検討し事象関連電位N400計測による実験を行った. その結果, ろう者が意味的に逸脱する日本手話を聞き取る場合でN400電位が確認され,検討した実験方法とN400電位による評価が意味処理分析で有用であることが分かった. 次に, この実験方法を用いてろう者の意味処理機構について, 手話と文字の呈示方法が処理過程に与える影響について検討した. 3名のデータから, 同じ意味を持つ単語であっても文字で呈示した方がN400電位が増大し, 手話で呈示した方がボタン反応時間が増大した. このことより, 手話と文字の意味処理機構の違いを今後データを増やして調査する必要性が出てきた. また, 1組のデータであるが言語野近傍の推定電位についてろう者と健聴者の比較を行った. その結果, ろう者は単語に対する選択的注意がみられ無意味語の処理過程で意味処理過程と類似した反応が見られた. 以上より, ろう者特有の意味処理機構を調べる実験手法が検討されその解明の可能性が導かれたと考える.
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