1年目の研究計画として、(1)浮き指のスクリーニング方法の妥当性、(2)身体機能への影響を挙げており、以下に実験の概要を示す. 【実験1】 浮き趾のスクリーニング方法の妥当性と信頼性について検討する事を目的とした. 当初市販されているpedo-scopeを購入する予定であったが機器購入予算の不足により、先行研究を基に低予算で作成可能な改良型pedo-scopeを試作した. また浮き趾のスクリーニングチャートを作成し、機器による撮影の再現性、評価者(検査者内・検査者間)のスクリーニングの再現性について検討を実施した. 健常女子大学生216名と三原市内在住の高齢女性50名に対してそれぞれ足趾接地状態の評価を行った. 各項目とも0.8以上の高い信頼性を示しており、足趾接地状態の評価方法としての妥当性が示された. 【実験2】 自宅で生活する高齢者女性30名を対象にフットプリント法およびピドスコープ法による足趾接地状態の評価を行い、浮き趾群8名、全足趾接地群を抽出した. 各群に対する評価項目として、足趾筋力、足趾機能評価、FRT(バランス検査)を挙げ、浮き趾群と全足趾接地群の比較を行った. 全足趾接地群と比較して浮き趾群では足趾筋力およびFRT距離が有意に減少した. 【実験3】 同様の被験者に対して足趾機能の影響を反映すると考えられる爪先立ちによるFRT(以下変法FRT)を実施し、その際の荷重量について計測した. なお、変法FRT距離計測時にはNitta社製F-scanを用いて足底圧中心の偏移(以下COP移動軌跡)と足趾部の荷重量を計測した. 足趾接地群では変法FRT実施時のCOP軌跡が足趾部まで到達しているのに対し、浮き趾群では中足骨頭部で停止しており足趾での荷重量が減少していた. 実験2および実験3の結果より浮き趾者では足趾による重心制御が困難となり、これらの機能が低下した場合転倒につながる可能性が示唆された.
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