研究概要 |
足趾は感覚器および運動器として働き、姿勢保持や動作時の安定性の確保に重要な役割を担うことが報告されている.近年,静止立位時や歩行中に足趾が地面と接触しない『浮き趾』の存在が報告されている.しかし,浮き趾が動作や身体機能に与える影響については報告されておらず議論の余地がある.本年度の研究では浮き趾の有無が歩行中の足底圧および足底圧軌跡に与える影響について調査することを目的とした.まず,健常成人女性104名に対し静止立位時の足趾接地状態の評価を行い,その結果から,浮き趾群20名および完全接地群15名を実験対象として抽出した.次に,両群における歩行中の足底圧計測を行い,足趾および前足部の荷重量,足底圧軌跡の軌跡長を抽出し比較検討した.また軌跡の形状を「あおり型」「直線型」「非あおり型」,軌跡の終着点を「足趾到達型」「止まり型」「もどり型」に分類し比較検討した.結果,完全接地群と比較し浮き趾群では,足底圧軌跡長,足趾荷重量が減少し,足底圧軌跡においても一般的とされる「あおり型・足趾到達型」が減少する傾向が認められた.浮き趾群では足趾による支持基底面の形成ができず,歩行中の重心の前方移動が困難であると共にウィンドラス機構が働かず足部の剛性が低下し非効率的な歩行につながる可能性が示唆された.また,足趾による荷重配分がおこらず中足骨頭部に対する圧の集中が認められたことから、中足部横アーチの低下や開帳足の原因となる可能性が示唆された.前年度の結果から浮き趾が認められる高齢者では,バランス能力の低下,足趾筋力の減少や足趾機能の低下,偏平足や外反母趾等の足部アライメントの異常が高率に認められており,本研究の考察を支持する結果が得られている.そのため,持続的な足趾の接地不良が足部形態や動作に影響を及ぼす事が示唆され,不安定路面での歩行やタオルギャザー等の足趾屈筋群の賦活が重要であると考えられた.
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