研究概要 |
脳梗塞後の麻痺回復に関わる運動制御には、梗塞巣周囲の大脳皮質における機能的変化が推察されるが、その分子変化については不明な部分が多い。そこで、中大脳動脈閉塞再灌流を行った脳梗塞モデル動物を用い、FITプログラムに準じて週7日の訓練を2週間毎日行い、運動学的機能評価と大脳皮質におけるantibody array及びWestern blotによる解析を行った。脳梗塞手術2日後より1日12時間のランニングホイールを用いた自発運動訓練を行ったexercise群(n=20)と、訓練を行わないcontrol群(n=20)の2群間で、運動機能評価であるrotarod testの経時変化を検討した。訓練開始前における両群間には有意差は認められなかったが、訓練開始後5日目以降control群と比較して、有意な運動機能の改善が認められた(p<0.05)。このことは、1日12時間の自発運動訓練が協調運動など運動機能の改善に効果的であると考えられる。さらに、運動機能学的に有意差が認められた訓練開始5日後の大脳皮質antibody array及びWestern blotを用いた解析では、複数のリン酸化酵素、核内タンパク、神経成長因子、ストレス応答、細胞骨格の重合に関連する11種のタンパク質のup-regulationが、またapoptosisに関連したタンパク質などのdown-regulationが認められた。麻痺回復に関わる運動制御には神経可塑性の存在が考えられ、増加したタンパク質の中からnerve growth factor (NGF), protein kinase C(PKC), calmodulin (CaM)などの因子に着目した。これらのタンパク質は様々な生理機能に関与しており、可塑性に関与するか否かの確認のため、これらのタンパク質と相互作用を示し神経突起伸展に関与するgrowth associated protein-43 (GAP43)の発現量を解析し、その発現が有意に増加していた。 今回の解析により、脳梗塞後の運動機能回復に関わる大脳皮質の可塑性発現にはPKC,NGF,CaM,GAP43などのタンパク質がその一端を担っている可能性が示唆された。
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