研究概要 |
脳卒中麻痺側上肢への機能訓練として随意運動介助型電気刺激(Integrated Volitional control Electrical Stimulation:IVES)が注目されている.今回,回復期脳卒中片麻痺患者20名(男性11名,女性9名,平均年齢は61.7±14.8歳(33~83歳),右片麻痺14名,左片麻痺6名,発症からIVES開始までの平均期間は,54.7±20.5日)の麻痺側上肢に,IVESによる訓練を3週間行ない,1週間の効果が保持されるかを検討した.また,保持期間後の手関節背屈自動運動角度(a-ROM)の変化によって向上群,維持群,減少群の3群に分類し,効果が保持されているかを検討した.今回の研究を進めるにあたり,当院の倫理委員会に研究計画書を提出し、その承認を得ている.また,対象者の選択にあたって,IVESの処方が出される際,医師が患者に今回の調査の主旨,訓練方法について十分な説明を行い,同意を得た.今回のIVESの実施方法として,電極を手関節背屈筋群に装着し,手関節背屈動作5秒(休止時間5秒)の反復運動と,40cm台上に設置したボール(直径7cm)へのリーチ動作を各10分ずつ計20分,7日/週,3週間行わせた.なお,IVESは作業療法訓練時間内に行った. 手関節a-ROMの平均は,開始時17.8度,3週後30.0度,保持期間後30.3度で開始時と3週後に有意差を認めたが(p<0.01),3週後と保持期間後に有意差は認めなかった.3群の開始時手関節a-ROMの平均は,向上群20.7度,維持群22.1度,減少群9.2度であった(p=0.33).減少群の開始時筋緊張は比較的高いか,または低緊張であり,3群間に有意差が認められた(p<0.05).IVES後の機能保持に対しては,開始時の筋緊張が影響を与えていることが示唆された.
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