末梢神経傷害においては、神経が骨格筋を再支配するまでの期間の長短が、傷害後の機能回復の程度に大きく影響を与える。今研究は従来用いられているような筋の性状を維持する目的での物理療法が、末梢神経の再生そのものに対してどのような影響を与えるかを、マウスの坐骨神経損傷モデルを用いて形態学的・組織学的な手法で検討するものである。また、除神経により二次的に生じる褥瘡などの皮膚損傷を防ぎ改善することも、機能回復の面では非常に重要と考え、神経再生に適した環境をつくるための積極的な治療手段として物理療法を用いることの有用性についても合わせて検討を行った。 昨年度は、坐骨神経損傷により除神経を行ったマウスに、トレッドミルでの強制歩行を行い、より確実な足底皮膚傷害モデルの作成の検討を行った。坐骨神経切断により、歩行時のマウスの足底接地部位が、正常歩行時と異なることが、ビデオカメラを用いた歩行分析で明らかとなった。足底皮膚の組織学的観察では、損傷皮膚部の上皮細胞の傷害像や、膠原線維の増加が観察された。傷害皮膚に超音波などの各種物理療法を適用し、これらが末梢神経や皮膚にどのような変化を与えるのかについての免疫組織化学的手法を用いた検討については、現在引き続き実験・検討中である。
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