研究課題は、脳血管障害(以下、脳卒中)発症後6か月以降の慢性期患者群に対する理学療法において、従来の標準的介入に加え患者自身が行う活動(習慣化された歩行)を加味した介入指導を行い、理学療法がもたらす行動変容の障害予防効果を良質なランダム化比較試験を用いて明らかにすることである。 平成20年度は、脳卒中慢性期における質の高い理学療法エビデンスのレビューおよび小規模サンプル数における割り付け法のシミュレーションを目的とした。 1. レビューでは、慢性期であっても運動スキルの向上は可能であるが得られた効果の持続性に関する知見が乏しいことを明かした。慢性期における理学療法手続きや結果に影響するライフスタイルの把握といった要件を踏まえると単施設における少規模サンプルでも良質な効果量を見出していくデザイン上の工夫が課題であることを見出した。 2. シミュレーションでは、単施設研究で割り付け数に関して統計的検出力を高め、かつ重要な予後因子を均質にする観点から層別置換ブロック法や最小化法が好ましいことを確認した。 本年度成果の意義は、脳卒中慢性期の理学療法がもたらす患者の行動変容の効果量と持続効果を高める方策を検討する上での研究課題を特定したことである。例えばアウトカムの設定では「歩行活動を主とする生活習慣」、「行動形成の段階」、「身体活動量」、「ゴール到達行動」、「セルフエフィカシー」といったキーワードに基づく検討、無作為割り付けでは実際の患者データを二次的に利用して予後因子間の相関構造の検討である。 脳卒中の有病者は高齢者に多いため、虚弱高齢者の「障害予防」として良質で科学的なサービスの指針につながる実用的研究になり得ると考える。
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