研究概要 |
研究課題は、脳血管障害(以下、脳卒中)発症後6か月以降の慢性期患者群に対する理学療法において、従来の標準的介入に加え患者自身が行う活動(習慣化された歩行)を加味した介入指導を行い、理学療法がもたらす行動変容の障害予防効果を良質なランダム化比較試験を用いて明らかにすることである。 平成21年度は、脳卒中慢性期における転倒予測に役立つ評価方法のレビューを行うと共に、二次障害予防のための付加指導のプロトコル作成をねらいとした後期高齢者を対象としたシングルケーススタディー等を実施した。 1. レビューでは、陽性尤度比に着目して、慢性期脳卒中では従来のバランス機能評価に加え、認知機能を伴う二重課題による評価を組み合わせた方法が、最も高い予測精度を有することについて示唆が得られた。 2. 地域高齢者においては移動機能が手段的日常生活能力の低下に影響力をもっとされる。シングルケーススタディーでは散歩活動の追加と一日当たり15分程度のインターバル速歩を指導することで、一日当たりの歩数が平均2,800歩、2メッツ以上の運動量が平均81kcal増加し、指導期が終了しても積極的な散歩活動が継続される傾向を確認した。これは散歩という活動的余暇習慣を利用した指導付加であったため継続が容易となったと考えられた。 3. 脳卒中慢性期患者における予後因子間の相関構造を検討した結果、重症度を表す運動機能障害が移動能力や生活機能得点とよく相関する関係性を見出した。ランダム化比較試験における無作為割り付けでは年齢と運動機能障害を層化因子とする層別置換ブロック法か最小化法が有用であることが示唆された。 本年度成果の意義は、脳卒中慢性期の理学療法がもたらす患者の行動変容の効果量と持続効果を検証する研究デザイン上の示唆を得たことである。
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