研究概要 |
聴覚障害者の高等教育や社会参加をサポートするために,遠隔から手話通訳や字幕による情報保障を提供する遠隔情報保障に関する研究開発に取り組んでいる。本研究ではより臨場感の高い遠隔コミュニケーションを実現するために,手話の実写立体映像の撮影と提示および伝送方法の提案,試作を行い,その評価を実施した. 現在,TV放送などで実用化されている立体映像の多くは,視差のあるステレオ映像を1画面に縮小合成し,立体ディスプレイに合わせて引き伸ばして表示されている。しかし,ステレオ映像の縮小と引き伸ばしは立体映像として表示する際の解像度低下の原因となり,手話や表情などが読みづらくなる可能性がある.そこで,赤外線TOF方式の距離画像センサとカラーカメラを組み合わせて,距離映像とカラー映像による立体映像撮影,伝送,表示方法を提案し,システムを試作した.試作システムでは,カラー映像に対する距離映像の画像サイズの比が約0.21倍以上であれば自然な立体映像を観察できることを確認した.画像サイズの小さい距離映像を分割してカラー映像へ合成することによって,立体映像の解像度をほとんど低下させることなく伝送,表示することが可能になった. 試作システムを用いて撮影,表示した実写立体映像(3D映像)の有効性を確認するために,通常の映像(2D映像)との比較を行った,また,伝送時の画像サイズとして,800×450(通常時)と256×144(映像伝送に必要なネットワーク帯域不足の場合)を設定して,各解像度における3Dと2D映像についても比較した.その結果,3D映像は2D映像よりも手話の正確な読み取りに効果があり,低い解像度でも有効であることが明らかになった.指文字の読み取りの正確さも向上する傾向があることが示唆された.今後はその他の情報保障コンテンツとの相補的な運用方法について検討し,聴覚障害者を取り巻く社会環境のさらなる改善に取り組みたい.
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