研究概要 |
本研究では, 介護施設に入所する高齢者の自立移動に着目し, 高齢者や関与者に対する移動に関する意識調査および計測用電動車いすを用いた介入実験を行うことで, 実生活に適応した移動支援機器の設計要件や利用環境への用件を明らかにすることを目的とする. 平成20年度は, (1)介護施設利用者の移動に関する調査, (2)介護施設利用者の移動行動特性計測システムの検討, (3)介入実験・効果の評価に関する検討を行った. (1) 介護施設利用者の移動に関する調査 グループホームや介護老人保健施設の4施設において, 施設職員4名を対象とした調査を行った. 調査項目は, 施設の状況・入居者の状況・機器や用具の利用状況・施設内の移動に関連する状況・機器導入に対する考え方である. その結果, 入所期間, 施設環境, 職種や機器の知識により機器導入の考え方が異なることが確認できたため, これらの項目を基準にして対象施設を選択する方針を立てた. また, 入所者9名を対象とした移動支援機器の利用に関する意識調査, 評価スケール(PIADS, QUEST)を用いた調査を実施した. (2) 介護施設利用者の移動行動特性計測システムの検討 調査結果から, 移動機器の中でも車いすの利用率が高く, 問題が多いことが確認できた. そこで, 車いす利用者の移動生活パターン(車両速度, 乗車/乗降時間など)を計測するためのシステムとして, ベースとなる車いす(簡易電動車いす)やセンサ(加速度センサ, エンコーダ)の選定を行った. (3) 介入実験・効果の評価に関する検討 移動支援機器の介入評価手法の事例として, 移乗時のブレーキかけ忘れによる転倒を防止するための車いす自動ブレーキ装置の評価を行った, 評価は, 基本機能の有効性を確認する短期評価と介入効果を確認する長期評価の2種類を計画した. 今年度は, 入院患者10名を対象とした短期評価を実施し, 基本機能の有効性を示すとともに評価方法の検討を行った.
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