研究概要 |
近年,運動・感覚障害者の自立と社会進出のために,ユーザやその支援者の視点に立ちロボティクス・メカトロニクス技術を開発・応用する研究が活発である.なかでも,肩離断などの高位切断者や高位頸髄損傷者は,腕と手の機能が協調したより自然な操作系で動かしうる多機能な上肢機能を代行しうるシステムへの強い要望がある.問題は,残存する身体部位に制約を設けることなく,失った関節部位を独立に操作しうる信号源と信号源の数を確保する点にあり,適切なセンサと信号処理系の設計がキーとなる. 本研究の目的は,義手や生活支援用ロボットアームの3自由度肩関節機構のhuman-machine interfaceとして,肩甲骨の姿勢と周辺筋から筋電位信号をセンシングし,パターン判定した肩関節動作を実行するコントローラを開発することで,多機能義手の直感的で独立な入力系の基礎技術を確立することである.本年度は,選定した電極位置にて得られる肩甲骨の周辺筋の筋電位信号と肩甲骨の姿勢角度の情報に対し,より安定した信号処理系を確立し,また,個人毎に設定を最適化するために,筋電信号には適応フィルタを導入し,動作判定用のアルゴリズムなども含め,オンラインでリアルタイムにPCのソフトウェア上で評価を行える計測実験用シミュレータを構築した.また,肩甲骨用ソケットの採型方法として3次元形状計測装置を用いる方法に関する基礎実験を行い,ソケット制作方法について検討した.また,シリコンソケットの外装のシェルとして軽量強剛性の新材料を導入するため,材料の基礎実験を進めた.
|