本研究では、地域在住高齢者の歩行能力を多面的に評価し、動作の改善とそのために必要なトレーニングについて具体的な助言を行えるシステムの開発を目的としている。このシステムは、高齢者の歩行時の足のつま先と踵の接地・離地に関するパラメータ(接地パラメータ)をビデオ解析によって測定し、対象者の歩行能力の評価や改善のための助言を行うものである。システムの開発には、本研究が対象とする地域在住高齢者の接地パラメータ、及び握力、5m歩行時間、開眼片足立ち時間、膝伸展筋力などの体力測定項目の関係を明らかにすることが不可欠であり、平成20年度はこのために、体力測定データの相互関係についての予備的な解析に取り組み、接地パラメータの測定と評価・フィードバックを行うシステムの基本設計の構築を行った。その結果、区市町村における介護予防プログラム参加者の体力測定データの分布や、それらと生理学的な測定データとの関係を把握することができ、システムの基本設計を検討するうえで重要な基礎資料を得ることができた。さらに、この予備的な解析結果を踏まえて、システムに歩行改善のための助言をフィードバックできる機能を暫定的に組み込むことができた。システムにこの機能を付加したことで、これを用いて接地パラメータを採取し、フィードバックを行なって、システムの効果を検討することができるようになった。既に、区市町村においてデータ採取とフィードバックに取り掛かっているところであり、蓄積されたデータを再解析し、評価尺度の修正や助言をフィードバックする方法の改良などを引き続き行っていく予定である。
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