研究概要 |
ヒトの脳内情報処理過程に対する一過性の運動効果を解明ることを目的とし,今年度は一過性の運動中における自動的な脳内情報処理過程(刺激に対して能動的に注意を向けない)への影響について,事象関連電位のミスマッチ陰性電位(MMN)を用いて検討した. 本研究は精神疾患や神経疾患の既往歴のない若年者34名を対象に実施された。本研究は運動を行わずにMMNを測定するコントロール条件と心拍数予備能(HRR)の20%,40%の強度の自転車ペダリング運動中にMMNを測定する運動条件で構成された.MMNの誘発には聴覚刺激を用い,500Hz(240回)と750Hz(60回)の聴覚刺激を1秒間隔でランダムに提示した. 前頭葉(Fz)から導出されたMMN振幅はコントロール条件,20%HRR条件に比べ40%HRR条件で有意に増大した. 本研究における40%HRR条件のような中等度強度の運動は至的覚醒水準に導くことが報告されている(Chumura et al.,1994 ; Kamijo et al.,2004).また,全身性の運動中には前頭葉の賦活(局所血流量の増加)も認められている(Ide et al.,1999 ; Suzuki et al.,2004).MMNの発生源の一つとして前頭葉が挙げられており(Molholms et al.,2005),自転車ペダリング運動による至的覚醒水準へのシフトや前頭葉の賦活に伴いMMN振幅が増大した可能性が考えられる.
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