研究概要 |
本研究は,一定頻度での電気刺激による筋収縮中において,単発刺激付加後することによって力が増大してそのまま維持されるcatchlike propertyという現象の生理学的メカニズムを解明することを目的とした.前年度の研究によりcatchlike propertyが効率よく発生するためには,一定頻度刺激が17.5Hz程度であることが同定できた。よって,本研究では,一定頻度刺激は17.5Hzを採用し,刺激は2秒間行った.単発刺激付加は刺激開始1秒後とし,その際の瞬時刺激周波数は50Hz(20ミリ秒間隔)であった.対象は健常成人男性10名の右脚足関節底屈動作とした.超音波Bモード法による画像測定を腓腹筋内側頭にて77フレーム/秒で行った.得られた画像より,筋束と深部腱膜の交点の移動距離を腱の伸張量(L)を連続して得た.筋トルク(筋力)の値とLの比より腱のstiffness変化を時系列で算出した.その結果,catchlike property(単発刺激後に力が増大・維持される)が明らかに得られる対象者の場合は,stiffnessの一時的な増加が維持されていた.一方,単発刺激後に力が増大するものの維持されない,もしくは維持されていたとしても微小であった対象者の場合は,stiffnessの増加も一時的であり,維持されることはなかった.この結果より,単発刺激後に力が増大・維持されている時間帯は,腱stiffnessの増大が維持(筋がより短縮)された筋腱の形状で保たれているといえる.したがって,Catchlike propertyの発生メカニズムは,腱stiffnessなどの筋・腱複合体の振る舞いにより決定されると結論つけされる.
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