研究概要 |
両手協調動作に大脳と小脳がどのように係わり,また,互いに連関するかについての研究を目指している.今年度は実験手法として,機能的磁気共鳴画像法(fMRI),近赤外線分光法(NIRS),経頭蓋磁気刺激法(TMS),および電気生理的手法による脳内の神経細胞活動の記録を行った.まずは全ての方法で,片手の動作による基礎データの構築を行った. fMRIでは大脳の運動野および同側小脳の5葉において,細かな運動パターンに応じた類似の活動が発見され,これらの部位で大脳と小脳の連関が密であることが示唆された.この実験結果については,論文として発表した. NIRSで同じ現象が発見できれば,より自然な運動課題での検証が可能であると考えられたが,空間分解能の問題により,同等のデータ取得は困難であることが明らかになった.TMSでは,課題遂行中の様々な脳部位の興奮性の変化が検証でき,これは次年度への課題として残っている.電気生理的手法では,運動遂行中のサルの小脳5葉より神経活動の記録を行い,大脳から小脳への入力層における情報処理について検討した.大脳から小脳へは,大脳運動関連が作る運動指令とほぼ同じ情報が入力していることが明らかとなった.また,入力層に存在するゴルジ細胞が構築するフィードバックループおよびフィードフォワードループを擁する入力層を通過した情報は,情報内容がより先鋭化される可能性が示唆された.この実験結果については,すでに学会発表を行ったうえ,現在論文にまとめている最中である.
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