本研究は、子どもの「意欲」(積極的に何かをしようと思う気持ち)を育む身体教育活動として野外教育プログラムをとりあげ、「適応」の観点からその教育効果の解明をめざすものである。平成22年度は、(1)幼児(5歳児)を対象としたプログラムでの予備調査の結果をまとめた研究報告1編、(2)平成21年度実施の小中学生を対象としたプログラムにおける調査結果についての学会発表1件、の2件を研究成果として公表した。(1)については、宿泊保育として実施されている1泊2日の自然体験に参加した57名の幼児について調査を行い、1)わが子の自立心、協調性、自己表現を高める効果を保護者が認めていること、2)子ども自身の主観において自立心の高まりが認識されていること、の2点が明らかとなり、次年度実施予定の幼児を対象としたプログラムに対する実践上の示唆を得ることができた。また、(2)においては、「感性」(人的環境を含む環境とのつながりを価値あるものとして感じる力)および「自然体験効果」について、対象者の特性別に検討した結果、感性にかかわる部分では対象者の特性に関わらず効果が認められることが明らかとなった。また、適応の観点から見た野外教育における自然の意味についての仮説生成に資するために、野外教育実践者である自然学校副校長、青少年教育施設元職員(現大学教員)、高校教員、野外教育を専門とする大学教員、森林環境教育を専門とする大学教員などから、自然と適応に関するヒアリング調査を行った。これらの結果から、心理社会的適応についてはそれぞれの年代の発達課題のうち野外の環境においてより達成されやすい側面があることが示唆された。一方で、生理的適応については予備調査を行ったものの必要な精度が得られなかったため、測定機器を調整したうえで再度予備調査を行う必要がある。
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