研究概要 |
これまでにそのような合理的な疾走動作を獲得するための具体的な方法については提示されていない.そこで本研究では,主に遊脚の膝関節角度,およびもも上げ角度に関して合理的な動作を獲得するための補助具を開発し,その効果を検討することを目的とした.本研究の被験者は,愛知県N小学校6年生2クラス66名(男子38名,女子28名,)であった.本研究において使用した補助具は,幼児用笛つきサンダルを改良し,ベルトによって大腿部に固定できるように開発したものであり,遊脚において膝関節が十分に屈曲している,または屈曲していない感覚を,音の有無によってフィードバックさせるものである.実験は,体育の授業を3時間とし,最初の時間と最後の時間に50m走タイムを測定した.二時間目の授業では,補助具を装着して,もも上げ運動を行い,遊脚の膝がしっかりと屈曲されている場合に音がなり,屈曲されていない場合に音がならないことを確認された.その結果,30m-40m地点における疾走速度およびピッチは,PostにおいてPreと比較して有意に高い値を示した.なお,ストライドは,PreとPostの間に有意な差は認められなかった.遊脚の膝関節屈曲角度は,平均値ではPreとPostとの間に有意な差は認められなかったが,Preにおいて膝関節角度が大きいものはPostにおいて小さくなる傾向を示し,逆に膝関節角度が小さいものは大きくなる傾向を示した.これらのことから,本研究において開発した補助具は合理的な疾走動作の習得および疾走速度の向上に有効であることが示唆された.これは,目的とする動作ができているか否かのフィードバックが即時に行われたためであると考えられる.なお,遊脚の膝関節角度については,本研究において開発した補助具の使用により,最適な角度へ収束する傾向が認められた.
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