本研究の目的は、幼少年期のラグビー体験が子どもの「規律心」の形成にいかなる影響を及ぼすか、個別面接調査に基づき実証的に検討することである。従来の量的調査研究ではなく、質的調査研究を試みている。本年度の成果は、2009年11月7日に日本スポーツ教育学会第29回大会にて発表した。 本研究の対象者は、関東地方の少年ラグビー・スクール参加者を対象に他者と身体接触を伴う活動を行う際に生じる「感情」に着目してアンケート調査を実施した。得られた主な知見は以下の通りである。1)他者との身体接触に対する否定的感情は減少する、2)相手に挑発された場合でも、自分の感情をうまくコントロールできるようになる、3)ラグビーという特殊な時空間での身体接触であるということが強く認識されるようになる。以上のことから、徐々に身体接触に慣れていくことが大切といえる。 本研究に対しる学会時の質問や意見は以下の通りであった。「道徳性とは、道徳的判断を指すのか行為能力を指すのか」「道徳の内実は何か」「感情と道徳の関係について」「介入を行う必要があるのではないか」。これらは重要な指摘ではあるが、従来の道徳教育や人格教育における限界や枠の範囲内のものである。道徳と感情を結びつけることができないとしてきた従来の研究では、結局道徳や人格教育については実践的な働きかけはできない。ただ「道徳」という言葉を使用すると従来の議論と捉えられる危険が高いため、言葉の使用については検討する必要性を感じた。今後は個別に検証することにより、これらのアプローチを試みるのが本研究の特徴であり、次年度はこの課題に取り組んでいく予定である。
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