「体ほぐし」のねらいの焦点化とカリキュラム構成法の開発の糸口を見出すため、今年度は遊戯槻と体育史、教育行政哲学の観点を加味した文献調査を行った。「体ほぐし」では、「運動遊び」を楽しませてあげられるよう配慮すべきであって、カリキュラム構成の第一のポイントは、体を動かすことが即そのまま心地よさ、おもしろさといった心の動きにつながっていく、いわゆる「心」と「身」はあたかも一つの如く密接な関係にあるという感覚を、児童生徒に享受させることにある。そのために教員は、授業の「効率性」を度外視して、児童生徒の心身の活発な働きを誘発するための魅力的な場づくり(コーディネート)を考案しなければならない。 「体ほぐし」においては、児童生徒が、自己と他者の「心」と「身」のありように気づけるかどうかが重要な学習点である。そこで、人が「心」と「身」の両者を相互不可分的であると認識することの仕組みと意義を探る材料として、今年度はホイジンガの歴史的人間観を援用した。彼によれば、真面目に遊ぶ子どもたちは、全身全霊で遊びに没入する過程で、「充足感」「仲間との一体感」を味わいつつ、「遊びのもつ意味」の理解を促進させる。子どもは本質的に「遊び」を「ゆとり」であると認識している。自己と他者の良好な「関わり方」、このことに触れる最適の場は「遊び空間」であって、ゆとりのなかでこそ、彼らは「理性」を保ちうる。「理性」に目を向けた児童生徒には、その働きを駆使し、自己と他者の「存在」について考察するだけの素地が出来上がる。「私はどの行為を自分と他人に施すべきなのか」を見つめられるようになった児童生徒を、さらなる深い洞察へと教員は導いていく必要がある。そのための手立ての一つは「哲学」である。今後は、「体ほぐし」の授業において、どのような構成および方法によって哲学的な要素を取り入れていけるのかを検討していきたい。
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