研究概要 |
本研究の目的のひとつである, 客観的なデータを現場に必要な質的情報(表現, ドリルなど)に変える研究が必要であることから, まず, 野球の打撃においてキネマティクスデータを野球の現場で用いられている言語と照らし合わせる研究を行った. 野球選手16名を200Hzの高速度カメラで録画し, それぞれの被験者の一試技を選択し, DLT法を用いて関節とバットの点を三次元的に得るためにデジタイズした. 被験者をバットスピードによってHigh群(8名)とLow群(8名)に分け, 上肢の関節角度について, スイング時間を100%で規格化を行い各群で平均化して比較を行った. 1. High群のボトム側の肩関節内転と水平内転は0-10%時と50-70%時でLow群より有意に大きかった(p<0.05). High群のトップ側の肘関節伸展は, 40-70%時と90-100%時においてLow群より有意に小さかった(p<0.05). 2. High群のトップ側前腕の回外は100%時においてLow群より有意に小さかった(p<0.05). High群のボトム側前腕の回内が50-70%時においてLow群より有意に大きかった. High群のボトム側手関節の背屈は、20-30%時においてLow群より有意に大きかった. 以上のことから, High群がLow群よりスイング速度が大きかった要因として, トップ側肘関節ではより屈曲させることやボトム側肩関節の内転と水平内転によって「脇をしめる」ことが考えられる. そこで「脇をしめる」ための言葉かけとして, 「絞るように」前腕の回内と手関節の背屈を維持させることが有効ではないかと推察された. 本研究で得られた結果はキネマティクスデータから修正点として指導をする際の基礎的知見になるであろう. なお, 本研究のデータは前年度から継続したものであったが, 査読者のやり取りの中でデータを修正したりするために本科学研究費による支援を頂いた. 次年度は, 打撃のキネティクスと指導へと移行していく予定である.
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