本研究の目的は、脳性麻痺者の運動能力を麻痺のタイプ別、重症度別に明らかにすること。またその結果を科学的根拠に基づいたトレーニング方法開発のための基礎資料とすることである。 平成21年度は痙直型脳性マヒ者3名、アテトーゼ型脳性マヒ者4名、健常者2名の運動能力(MRIによる筋断面積、等速運動性筋力、動作速度、筋電図、有酸素性能力、身体組成)をスポーツホトニクス研究所にて測定した。平成20~21年度に得られたデータはPearsonの相関係数を算出し、各群の特徴を比較した。今年度は筋力と筋断面積、動作速度との関係性を群毎にまとめた。 結果、アテトーゼ型脳性マヒ者における1.筋力と筋断面積との関係については、大腰筋の筋断面積と股屈筋力、大腿四頭筋と膝伸筋力、ハムストリングスと膝伸筋力との間に高い相関が見られた。同様に2.筋断面積と動作速度との間や、3.動作速度と筋力との間にも高い相関関係が認められた。これは、健常者と同様の傾向であった。アテトーゼ型脳性マヒ者については不随意運動に留意しながらも、健常者と同様のトレーニングで効果が得られる可能性が示唆された。 痙直型脳性マヒ者においては1.筋力と筋断面積との間に相関関係は認められなかった。2.筋断面積と動作速度との間にも相関はみられなかった。3.筋力と動作速度との関係については、膝振上げ速度と股屈筋力、膝伸筋力との間に高い相関関係が見られた。膝振下ろし速度と筋力との関係については、主動作筋力である股伸筋力や膝屈筋力との間に相関は見られなかったが、拮抗作用である股屈筋力や膝伸筋力との間に高い相関がみられた。これより、痙直型脳性マヒ者においては、筋力と筋断面積、動作速度との間にあまり関係性が認められず、筋と動作の関係性について健常者と異なる傾向が見られた。痙直型脳性マヒ者については、健常者と異なるトレーニング方法を個人に合わせて検討する必要が示唆された。
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