本研究の目的は、脳性麻痺者の運動能力を麻痺のタイプ別、重症度別に明らかにすること。またその結果を科学的根拠に基づいたトレーニング方法開発のための基礎資料をすることである。 脳性マヒ者の運動特性は科学的に明らかにされておらず、運動が筋緊張に及ぼす影響(関節の変形や筋緊張増大)への心配から、スポーツやトレーニングが全般的に禁忌とされる傾向にある。本研究では、脳性マヒ者の麻痺のタイプによる運動特性の違いに着目し、成人脳性マヒ者の中で最も多い痙直型と2番目に多いアテトーゼ型、2つのタイプの脳性マヒ者(男性)について下肢の筋と動作の関係性を比較した。具体的には、アテトーゼ型脳性マヒ者10名、痙直型脳性マヒ者10名の運動特性を比較するため、昨年度までに以下の7項目を指標として測定した。 (測定項目:股・膝関節屈伸の等速運動性筋力・MRIによる下肢の筋断面積・下肢の動作速度・空気置換法による全身体脂肪率・有酸素性能力・大腿四頭筋とハムストリングスの筋電図・100m歩行・走行速度)また、予備測定として、女性の脳性マヒ者についても各タイプ数名ずつ、同様の測定を行っている。 平成22年度は、脳性麻痺者の筋断面積、等速運動性筋力、動作速度、3つの測定項目についてタイプ毎に比較し、論文として報告した。アテトーゼ型脳性マヒ者においては、筋力・筋断面積・動作速度、全ての測定項目の間に相関がみられた。不随意運動の留意しながらも、健常者と同様のトレーニングで効果が得られる可能性が示唆された。 痙直型脳性マヒ者については、筋力・筋断面積・動作速度との間に関係性が認められなかった。健常者と異なるトレーニング方法を個人に合わせて検討する必要が示唆された。
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