本研究の目的は間欠的な低酸素環境曝露をもちいた運動パフォーマンスを向上させるトレーニング処方を開発することである。特に、近年低酸素を用いたさまざまなトレーニング方法がある中で、効果の有無に大きな影響を与える低酸素環境への曝露期間、曝露時間、曝露頻度、トレーニング強度設定および曝露する低酸素環境の濃度などの具体的な処方を掲示すること、さらに、低酸素環境への曝露時の個人ごとの生理反応の違いを考慮したトレーニング処方を検討することである。これまでの研究結果により、高地環境での滞在およびトレーニング実施時に付加的な睡眠時低酸素環境曝露が増血や運動パフォーマンスに効果的であることが示唆されている。そのため本研究では高地環境滞在時の睡眠時低酸素環境曝露についての適切な低酸素環境、曝露時間、実施期間を検討することを目的とした。 本年度は特に実施期間についての検討を行うことを目的に研究を進めた。 大学生陸上中長距離選手9名を対象として、標高1300m地点に滞在し、日中のトレーニングは標高1800〜2200m地点で実施した。期間は15日間で、滞在中睡眠時は10時間標高3000m相当の常圧低酸素環境に曝露した。期間の前後には最大酸素摂取量、総ヘモグロビン量を測定し、血液検査により血清エリスロポエチンなどを測定した。血液検査は滞在中にも実施した。本研究の結果、最大酸素摂取量、総ヘモグロビン量共に、前後で変化はなく、増血や有酸素能力の向上は今回の処方モデルでは生じなかった。この結果が期間によるものか1回あたりの曝露時間によるものかについては今後検討する必要があると考えられる。
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